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日替わりコメント写真集

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「じゅぽんのつぶやき」『十話』

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第十話

前回までのあらすじ

「じゅぽん」という、小狸がつぶやく、一家と「樹囁庵」の物語。

「じゅぽん」は、「じっちゃん」を迎えに行く前の晩、巣穴の床で「じっちゃん」の昔話を思い出していた。
後に皆から「明神騒動」と呼ばれる、狐一族との争いである。ボクは、益々興奮して、親父が話してくれたことを一つ一つ思いかえしていた。「サブ」(じっちゃん)は、狐一族を懲らしめて、「明神」にも、平和が戻ってきた。
そして、「クリノキサコ」に置いてきた、じっちゃんを迎えに行く日になった。

第十話

 
つぶやき終えた「じゅぽん」の手のひらにも、脂汗が滲んでいました。
とうとう、東の空が明るくなってきていました。

そうじゃ、今日は、皆で「クリノキサコ」へ、じっちゃんを迎えに行く、大事な用があるのだ。そう言うと「じゅぽん」は、うとうとして少し眠り込んだようです。
 巣の外が騒がしくなり、目を覚ました「じゅぽん」でした。
親戚の働き盛りの連中が、集まって来ていました。木で作った担架も傍に置いていました。
お袋が近づいてきて、ボクに「じゅぽんも、一緒に行きなさい、私たちはここで留守番してるからね」と言いました。
 ばっちゃんが、どうしても付いて行きたいと、と言いはり、お袋と妹が、ばっちゃんの留め役として、ここに残るのだと言うのです。
ボクは「どうして、ばっちゃんは、付いて行くというの?」とお袋に尋ねました。
 「それがねー、おかしいのよ。夢を見て、じっちゃんが、ばっちゃんの名前を呼びながら、濃い霧の中に消えて行ったと言うの、それでどうしても、ついて行くってきかないの」何か不吉な予感がしたのだろうか?
 「ふーん。そんなこと」と言ったボクにも、何か言い知れない胸騒ぎを感じていました。

用意が出来、皆で「クリノキサコ」に向かったのは、濃い霧も晴れて、太陽のまぶしい光が、木間から、地面にきらきらと輝く頃でした。険しい獣道を急ぎ足で、駆け下りると、汗を掻いてきました。途中で休むこともなく、皆は言葉も交わさずに黙々と下っていきました。

 一方、「クリノキサコ」のじっちゃんは、「じゅぽん」が、昨夜、床の中で「明神騒動」の話を思い出していたころ、まったく同じことを回想していました。ただ違ったのは、狐の「ゴン」が、「助けてくれ」と言ったところからです。
 じっちゃんは、遠くで、ばっちゃんの呼ぶ声が聞こえたようです。これから先は、じっちゃんから聞いたのではなくボクタチがであった古老狸から聞いた話と、想像したことなのですが・・・・・・・。

 「おや?ばっちゃんがどうしてここにいるのかな?」桂ケ森に帰ったとばかり思っていた、ばっちゃんの声がはっきりと聞こえた。
 傷で痛い足を引きずって、じっちゃんは、ばっちゃんの声のする方に、近づいていったのでした。霧が深くて、姿が見えない、なおも近づいて行った。
 「樹囁庵」に通じる、排水路に沿って、じっちゃんは、下って行ったようでした。でも、ばっちゃんの姿を見つけることは出来なかったようです。とうとう力が尽きて、「樹囁庵」の入り口の鉄板蓋の下で、眠ってしまったようです。
 その姿を「樹囁庵」の主に、見つけられてしまったようです。

で、この続きは、第十一話でつぶやくことにいたします。





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